シリコンバレーのパーティーで見た、成功者たちの「夜の顔」が衝撃的だった

サンフランシスコのSoMa地区。平日の夜11時を過ぎると、オフィスビルの灯りが消え始める。しかし、この街の起業家たちの夜はここから始まる。

シリコンバレーは「ハードワークの聖地」として知られるが、その裏には独特の夜の文化がある。過酷な日常から解放される束の間の時間——それはバーの片隅で交わされる本音の会話であり、屋上テラスでのプライベートパーティーであり、時にはサンフランシスコの夜景を見下ろすペントハウスでの密やかな集まりでもある。

この記事は、シリコンバレーで活動する日本人起業家たちに取材し、彼らが語る「夜の過ごし方」をまとめたものだ。

木曜の夜のVCパーティー

「シリコンバレーのネットワーキングは、オフィスではなくバーで行われる」——これは多くの起業家が口を揃えて言うことだ。

特に木曜の夜は、VC(ベンチャーキャピタル)主催のパーティーが目白押し。サンフランシスコのミッション地区やSoMaのバーを貸し切って行われるこれらのイベントは、表向きは「カジュアルなネットワーキング」だが、実際にはビジネスの駆け引きの場でもある。

日本人起業家のFさん(36歳)は語る。「最初のシリーズAの投資家は、木曜夜のバーで出会った。カウンターで隣に座った人がたまたまa16zのパートナーで、酔った勢いでピッチしたのがきっかけ。翌週には正式なミーティングが組まれていた」

こうしたパーティーの雰囲気は独特だ。全員がスマートカジュアルで、手にはクラフトカクテルやナパバレーのワイン。会話のトピックは、最新のAI技術からNBA(バスケットボール)の話題まで幅広い。しかし、その裏では全員が「誰が次の大きなディールを持っているか」を探り合っている。

サウスパークの秘密の晩餐会

SoMa地区のサウスパーク周辺には、招待制の晩餐会を定期的に開催するグループがいくつか存在する。参加者はシリーズB以上のCEO、著名なエンジェル投資家、そして時折、テック界の有名人。

Gさん(39歳・フィンテック創業者)は、そうした晩餐会の常連だ。「参加者は10〜15人。場所はパークサイドのレストランの個室や、誰かのペントハウス。料理はプロのシェフが準備する。ワインは1本数百ドルのものが当たり前に開く」

しかし、晩餐会の本当の価値は料理やワインではない。「ここでは、表では絶対に言えない本音が飛び交う。『実は次のラウンドが厳しい』『あの大手との提携は実質的に破談した』——こういう情報は、日中のミーティングでは絶対に出てこない。夜の、アルコールが入った状態での、信頼できるメンバーだけの空間だからこそ共有される」

Gさんによると、これらの晩餐会には暗黙のルールがある。「チャタムハウスルール——ここで聞いた内容は外に持ち出さない。誰が何を言ったかを第三者に伝えない。このルールが守られるからこそ、全員が本音を話せる」

起業家たちの「逃避」の形

シリコンバレーの起業家たちは、極度のストレスにさらされている。資金調達のプレッシャー、プロダクトの問題、チームの離脱——24時間365日、頭の中は問題で一杯だ。そんな彼らが選ぶ「逃避」の形は様々だ。

ミッドナイトランニング

サンフランシスコのエンバーカデロ沿いを深夜に走る起業家は少なくない。ベイブリッジのライトアップを見ながら走る5マイルは、最高のストレス解消だという。「深夜2時に走っていると、同じように走っている起業家とすれ違うことがある。お互い何も言わずに頷き合う。あの瞬間、自分は一人じゃないと感じる」(Hさん・32歳)

サンフランシスコのジャズクラブ

フィルモア地区のジャズクラブ「Sheba Piano Lounge」は、テック業界の隠れた人気スポットだ。薄暗い照明の中、ライブジャズを聴きながらバーボンを傾ける。「ここに来ると、スマホを見ない自分でいられる。音楽に没頭して、45分間だけ起業家であることを忘れる」(Iさん・35歳)

ナパバレーの週末

金曜の夕方にサンフランシスコを出発し、車で1時間半。ナパバレーのワイナリーで土曜日を過ごすのは、起業家たちの定番の息抜きだ。「ブドウ畑を見ながらテイスティングをしていると、スケールとかグロースとか、そういう言葉が頭から消える。自然のリズムで生きている人たちの世界に触れると、自分の焦りがいかに滑稽かに気づく」(Jさん・40歳)

夜の出会いとロマンス

シリコンバレーの起業家コミュニティは、意外なほど「出会い」の場でもある。昼間はビジネスの顔しか見せない起業家たちが、夜のパーティーやイベントでは異なる一面を見せる。

Kさん(33歳・女性・AI スタートアップCEO)は語る。「起業家同士の出会いは、普通の出会いとは質が違う。お互いの情熱を理解し合える。『週末も仕事をしている』と言っても引かれない。むしろ『わかる、自分もそう』と返ってくる。その共感がベースにあると、関係が深まるのは早い」

しかし、起業家同士のロマンスには独特の緊張感もある。「デートの約束をしても、どちらかのスタートアップで緊急事態が起きればキャンセル。それが3回続くと、さすがに相手も不安になる。でも、お互いが起業家だからこそ、その不安を正直に言い合える。『次にキャンセルしたら、本当に怒るからね』って笑いながら言えるのは、この世界ならでは」

サンフランシスコの夜景が見えるルーフトップバーでのファーストデート。ミッション地区のメキシカンレストランでの2回目のデート。ゴールデンゲートブリッジを歩きながらの3回目のデート。Kさんは「この街の夜は、ビジネスだけでなく、人生そのものを豊かにしてくれる」と語る。

影の部分——バーンアウトとアルコール

シリコンバレーの夜の文化には、影の部分もある。ネットワーキングと称した過度の飲酒、バーンアウト(燃え尽き症候群)からの逃避としてのパーティー三昧、睡眠不足の慢性化。

Lさん(38歳・元起業家)は、自身のバーンアウト体験を語ってくれた。「毎晩のようにイベントやパーティーに参加していた。ネットワーキングだと自分に言い聞かせていたけど、本当は現実逃避だった。会社の問題から逃げるために、夜の世界に没頭していた」

Lさんは最終的に会社を閉じ、1年間の休養を経て現在はVCのアドバイザーを務めている。「起業家にとって夜の付き合いは重要。でも、それが逃避になっていないか、常に自問する必要がある」

シリコンバレーの夜が教えてくれること

シリコンバレーの夜は、昼間の延長ではない。昼間は「起業家」という鎧を纏い、強さと自信を演じる。しかし夜になると、鎧を脱ぎ、弱さや不安を見せることが許される。

バーのカウンターで隣の起業家に「実は今月、資金が尽きそうなんだ」と打ち明けること。屋上パーティーで初めて会った人と、事業への情熱を語り合うこと。ジャズクラブで一人、音楽に身を委ねること。

これらはすべて、過酷なスタートアップの世界を生き抜くための、人間としての営みだ。

シリコンバレーの夜は、成功のためのネットワーキングの場であると同時に、起業家たちが「人間」に戻る場所でもある。そしてそれは、日本のスタートアップシーンにも必要なものではないだろうか。渋谷のバーで、六本木のレストランで、起業家たちが本音を語り合える夜の文化が育つことを願っている。